No.025 桃太郎は恐ろしい!?

桃太郎は、日本も昔話の基本中の基本!
だれでも知ってる物語です。

桃太郎の起源は、「吉備津彦命(きびつのひこのみこと)の温羅(うら)退治」です。
これは吉備津の国(現在の岡山県吉備津市)に伝わる伝説です。

むかしむかし、温羅と言う鬼が新山(にいやま)に城を築きました。
この鬼は、いつも吉備津の人々を苦しめていました。
温羅征伐を命ぜられた吉備津彦命は、中山に陣を構えました。
このとき、吉備津彦命は家来として犬飼部犬飼健命(いぬかいべのいぬかいたけるのみこと)と、
猿飼部楽々森彦命
(さるかいべのささきもりひこ)、鳥飼部留玉臣(とりかいべのとめたまおみ)の三名を従えました。
吉備津彦命は弓で温羅を射ましたが、温羅も岩を投げ反撃しました。
矢は岩とぶつかり、落下しました。
困った吉備津彦命は、ある日夢で住吉大明神(すみよしだいみょうじん)がお告げをされました。
お告げどおり、吉備津彦命は2本の矢を射ました。
1本の矢は、温羅の投げた岩に当たりましたが、もう1本の矢は温羅の左目に命中しました。
真っ赤な血を流した温羅はキジに姿を変えて逃げました。しかし吉備津彦命は鷹となって追いました。
温羅は鯉に変身し逃げようとしましたが、鵜に変身した吉備津彦命に捕まりました。
温羅はさらし首にされました。皆が安心したのですが、夜になると生首は泣きわめきました。
ある夜、吉備津彦命の夢の中に温羅がでてきて、こう言いました。
「わしの首を吉備津神社のかまどの下に埋めてくれれば、釜を鳴らして吉凶を占ってやる。」
吉備津彦命は、願いを聞き入れると。生首は泣きわめかなくなったという。

こんな伝説です。なかなかユニークな話ですね。
実は、現在でもこの伝説にちなんだ地名があります。
新山に築いた城は「鬼ノ城」、矢と岩がぶつかり落下した場所が「矢喰神社
温羅が血を流してできた川が「血吸川」、鯉の姿の温羅が捕まった場所が「鯉喰神社
そして、今もなお吉備津神社で行われてる行事で、釜を鳴らして吉凶を占う「鳴釜神事(なるかまのしんじ)
なんか、歴史を感じますね♪

ちなみに吉備津彦命は孝霊天皇の皇子、温羅は百済の王とされています。

さて、この伝説にちなんでできた、桃太郎。
室町時代に作られた話です。
桃太郎といえば、黍(きび)団子ですが「きび」は、「吉備津の国」の「吉備」のことでしょう。

今回、桃太郎は恐ろしいとタイトルに書いてありますよね。
この
温羅退治の話では、正義のヒーローなんですが、
桃太郎の話では、桃太郎は殺人鬼のように書かれています。
普通の児童向けのおとぎ話の本では、グロテスクな描写はかかれていませんよね。
では、なぜ殺人鬼なのか?
これは、桃太郎の歌にあります。
どんな歌だったか?

一 桃太郎さん 桃太郎さん お腰につけた 黍団子 一つわたしに 下さいな
二 やりましょう やりましょう これから鬼の 征伐に ついて行くなら あげましょう
三 行きましょう 行きましょう あなたについて どこまでも 家来になって 行きましょう
四 そりゃ進め そりゃ進め 一度に攻めて 攻めやぶり つぶしてしまえ 鬼が島
五 面白い 面白い 残らず鬼を 攻めふせて 分捕物を えんやらや
六 万々歳 万々歳 お伴の犬や 猿・雉子は 勇んで車を えんやらや

この歌は、明治44年(1911年)に岡野貞一(1878-1941)が作曲したものです。
ちなみに著作権は、1991年に期限切れになっています。

さて、この歌を検証しましょう。

一番は、桃太郎が腰に黍団子をつけて、鬼退治に向かうシーン。
その黍団子を、犬・猿・雉子がほしがっています。ここはまだ普通の歌です。

二番は、「やりましょう やりましょう」で始まっていますね。
これは、「黍団子をあげる」という意味です。
決して、「鬼を殺(や)りましょう」という残酷な言葉ではないと思われます。
けど、桃太郎はずるがしこく、家来になるならという厳しい条件付きで、あげました。
動物たちに、その条件を理解するだけの能力があるのだろうか…。

三番は、「いきましょう いきましょう」で始まっていますね。
これは、「行く」という意味であり、「逝く」という意味ではないと思われます。
けど、動物側からしたら、「逝く」かもしれません。
「あなたについてどこまでも」とありますが、
これは黍団子をもらうためについていってるとしか思えません。
さぁ、まるで騙されたかのように鬼退治に逝くことになりました。

四番は、「そりゃ進め そりゃ進め」。進んでますねぇ。強行突破ですか。
「一度に攻めて 攻めやぶり」。攻めまくってますね。攻めやぶってますね。
まるで、シューティングゲームの無敵状態を連想するほどの威力です。
つぶしてしまえ 鬼が島」。つぶしてしまえ!?
これは、あまりに酷いです。つぶしてしまえとは…。

五番は、「面白い 面白い」。なんと、面白がってます!?
血を見るのが大好きな、桃太郎…。残酷です。
「残らず鬼を 攻めふせて」。残らず…。残らずですか。
しかも、攻めふせる!?かなり酷いですねぇ。
桃太郎は、「鬼を面白半分に殺し、鬼が島をつぶしてしまえ」ということですね。
惨いですな。。
しかも、「分捕物を えんやらや」。なんと、桃太郎。分捕ってるし…。

六番は、分捕ったものを運んでいます。これらは村の人たちのもので、
それを鬼が捕ったので、捕り返したという設定ですが、本当に桃太郎は村人に返すのだろうか。
鬼を面白半分に殺す桃太郎は、本当に返すのだろうか…。微妙な所です…。

というわけで、桃太郎は恐ろしいということがわかりました。
なんたって、桃の中から生まれたので、脳がおかしくなったってしょうがないですが…。

since 2003/7/24
2003/9/18 「ちなみに著作権は、1941年1991年に期限切れになっています。」を訂正。

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