No.048 冥土の旅のしおり

人はいずれ死にます。今回は仏教の教えに基づき、死後の世界をたどっていきましょう。
まずは仏教の基本「因果応報」です。
過去の善悪の業に応じて現在の幸不幸の果報を生じ、現在の業に応じて未来の果報を生ずることです。
つまり、善いことをすれば、いずれ善いことが起き、悪いことをすれば、いずれ悪いことが起きるという訳です。

人は死んだら、中陰の世界に逝き、そして生まれ変わります。
しかし、必ずしも生まれ変われるとは限らず、生まれ変わっても現世のものではないかもしれません。
全ては「因果応報」によって決まります。

死んだら、生まれ変わるまで、中陰の世界を四十九日間さまようことになります。
この期間を冥土の旅といいます。
なぜ、冥土の旅をするのかというと裁判を受けるからです。
現世では、三回裁判を受けれる三審制ですが、中陰の世界は七審制です。
裁判は七日ごとに行なわれます。というわけで四十九日間に七回の裁判を受けます。
この裁判によって、逝く世界が決められます。
冥土の旅の間の死者の姿は、とてつもなく小さくて、人間には見えません。
食料は線香の香りです。なので、四十九日間は遺族は仏壇の線香を絶えず燃やしています。

中陰の世界、最初の難関は死出の山です。
高さは不明、長さは800里(3141.84km)という険しい山。
日本列島はおよそ3000kmなので、とてつもなく長い山です。
死出の山を七日間で通るので、一日に450kmは歩かなければなりません。
七日間かけて、死出の山を通ると第一審がはじまります。
第一審の裁判官は秦広王です。この裁判は審査だけで終ります。

第一審終了後、三途の川にさしかかります。
三途の川は、三通りの渡り方があるので、このような名前がついています。
三途の川には橋が一つかかっていて、善人のみが通れます。
程度の軽い悪人は浅瀬、重い悪人は濁流を渡らされます。

三途の川を渡りきると、衣領樹(えりょうじゅ)という木が一本生えてます。
その木の上に懸衣翁(けんえおう)という老爺の姿をした鬼がいます。
木の下には奪衣婆(だつえば)という老婆の姿をした鬼がいます。
奪衣婆が死者の衣服を奪い取ります。それを木の上の懸衣翁に渡します。
懸衣翁はそれを衣領樹の枝にかけます。
その衣服の持ち主の生前の罪の重さによって、枝がしなります。

三途の川の川原は、賽の河原といいます。
賽の河原では、親より先に死んだ子供たちがいます。
親より先に死ぬというのは、親に悲しみを与えるので、仏教界では重罪です。
子供たちは父母供養のために川原の石を積み上げつづけています。
「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため...」と言いながら。
しかし、どんどん積み上げると鬼が来て、容赦なく積み上げた石をばらばらにします。
その恐ろしさに子供たちはおびえます。それを慰めてくれるのが地蔵菩薩(お地蔵様)です。
地蔵菩薩は、子供たちを強く育てるために、子供たちを慰めるだけで、鬼を殺すことはしません。

そして、三途の川を渡ると第二審にいきます。
裁判官は初江王です。既に第一審のデータと、衣領樹のデータは届いています。
ここでは、仏教の五戒の「不殺生戒」を破ってないかを裁判されます。
「不殺生戒」は、現世で言うと「刑法199条 殺人罪」です。

その七日後に、第三審があります。裁判官は宋帝王
ネコとヘビを使って裁判をします。ここでは仏教の五戒の「不邪淫戒」を破ってないかを裁判します。
「不邪淫戒」は、現世で言うと「刑法176条 強制猥褻罪」です。

その七日後に、第四審があります。裁判官は五官王
魔法の秤(はかり)を使って裁判をします。ここでは仏教の五戒の「不妄語戒」を破ってないかを裁判します。
「不妄語戒」は、現世で言うと「刑法169条 偽証罪」です。
ここでは、来世の行き先が判断されます。「地獄行き」と判断された人は、必死に五官王に懇願します。
そして、執行猶予七日を命じられます。

その七日後に、第五審があります。裁判官は閻魔王
浄玻璃という水晶でできた鏡を使って裁判をします。
死者の生前の悪が全て水晶に映し出されます。
閻魔は意外に優しいので、なるべく地獄には行かせないようにしてくれる。
インド神話では、閻魔は最初に生まれた人とされている。
そして、最初に死んだ人でもある。なので、死者に対してはとても優しいのだ。

第六審では、変成王(へんじょうおう)が裁判官です。
五官王と閻魔王の報告に基づいて裁判を行ないます。

そして、四十九日目に第七審があります。
裁判官は秦山王(たいせんおう)です。ここで最終決定がされます。
王は六つの鳥居を示し、死者に選ばせます。
鳥居の奥にはそれぞれ別の世界が広がってます。
選んだ世界が、自分の生まれ変われる世界です。
六道輪廻」(ろくどうりんね)という言葉の通り、生まれ変われる世界は六通りあります。
六つの世界は、地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道。
数学的に言うと、鳥居を選ぶ確率は1/6だけれども、
「因果応報」により、ちゃんと自分の行くべき世界に行く事になる。

地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道についての詳細は、
またの機会で書こうと思います。

since 2004/2/28

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