No.050 地球一周は歩いて測られた!

太陽系第三惑星地球…。
そこは豊かな緑と水の星である…。

というわけで今回は地球一周の距離を測定したことの見聞録を書こうと思いました。
まずは地球の確認からです。
赤道半径は6378km、極半径は6357km。横長楕円体の星です。
太陽からの距離は平均1億4960万km。約365日6時間で太陽を1周。24時間で1自転。
地殻、マントル、核から成る星で、平均密度は5.52g/cm^3。表面は大気に覆われている。

地球は広い宇宙の中でも太陽系に属します。
では、同じ太陽系の仲間の惑星は他にどんなのがあるのか??
太陽を中心にして、「水金地火木土天海冥」ですね。
水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、この9惑星が太陽系です。
←太陽からみた太陽系
2004年3月に冥王星の次の大きい天体セドナが発見されました。
太陽系には惑星と呼ぶには小さすぎて微妙な惑星が数多くあります。
専門家の中では冥王星は惑星ではないという考え方もあります。
冥王星は今のところギリギリ、惑星ですが、セドナは惑星と呼ぶには微妙らしいです。
太陽の周りをまわってる「惑星」は9つですが、
「天体」だとセドナや、クワーオワー、そしてハレー彗星など数多くの星が含まれます。
なので、太陽系の天体はたくさんあるということです。冥王星周辺やその先にも太陽系は確認されています。

さて、そんな中の地球ですが、一体、地球一周はどのくらいの長さなのでしょうか?
それを世界で一番初めに求めようとしたのが、エラトステネス(BC276頃-196頃)です。
彼は古代ギリシャの数学者・天文学者です。今から2200年も昔に地球一周を測定したのです。
そんな昔には立派な測量道具はなかったはずです。それなのに彼はどうやって測ったのか?
…その方法とは徒歩です。
エラトステネスは「シエネで6月21日の正午に井戸の底に太陽が映る」ということを知りました。

さて、突然ですが理科の問題です。
@シエネで6月21日の正午に井戸の底に太陽が映ったということは太陽が真上に来ているという事です。
  このような状態をなんと言いますか?漢字二字で答えなさい。
Aシエネで6月21日は一年でもっとも昼が長く、夜が短い日です。一体、この日は何ですか?
    …答え、@南中 A夏至

エラトステネスは、アレクサンドリアで6月21日の正午に、垂直に棒を立ててみました。
太陽が真上にきているなら、影はできないはずなのに、影ができました。
アレクサンドリアでの棒の長さと影の長さの比から、三角比を用いて、
「アレクサンドリアでは太陽は7度傾いている」という事実が算出されました。
そこから、シエネとアレクサンドリアは緯度7度の差ということが判明。
地球が球なので一周は360度。
そこから、「地球一周の距離×7/360=シエネ・アレクサンドリア間の距離」という式を考案しました。
そして、エラストネネスはシエネ・アレクサンドリア間の距離を徒歩で測りました。
しかし、エラトステネスは仕事で忙しいので、実際に歩いたのは雇われた男です。
シエネ・アレクサンドリア間の距離は5000スタディアと測定されました。

1スタディオンは2分間に歩く距離です。今では大体160mに相当します。
スタディオンの複数形がスタディアです。
古代ギリシャの競技場の距離は1スタディオンと決まってました。
アテナイ競技場…184.96m オリュンピア競技場…191.27m デルフォイ競技場…178.35m
歩いて測ってるので、各競技場での1スタディオンはバラバラだったことがわかりますね(^^;
ちなみに、競技場のことを「スタディアム」というのは、この「スタディオン」が由来なのです。

さて、話は戻って、シエネ・アレクサンドリア間の距離は5000スタディア。
すなわち、約800kmです。雇われた男はこんなに歩かされて大変でしたね^^

ここから、地球一周の距離=800km÷7/360≒41143kmと算出されました。
ちなみに実際は約40000kmです。
現代の数学者は当時の技術でこんなに正確に測定されたことに関心しています。

ちなみに彼は41歳の時、アレクサンドリアの大研究機関「ムセイオン」の館長に就任しました。
博物館を英語で「ミュージアム(MUSEUM)」といいますが、
実はこの「ムセイオン(MUSEION)」が由来になっています。驚きですね。

話はもどって太陽系ですが、地球の周りを1つの衛星が回っております。
その衛星は月です。
月には多くの隕石が激突して、クレーターとよばれる穴がたくさんあります。
そんな中にエラトステネスという深さ58kmのクレーターがあります。
他にもクレーターにはアインシュタイン、ピタゴラス、ケプラー、ガウスなど世界の偉人たちの名前がついております。

さて、数学マニアの方は、エラトステネスで素数を思い出す方がいると思います。
素数を見つける方法、その名も「エラトステネスの篩(ふるい)」です。
この方法を使って素数を見つけてみましょう。

っと、その前に素数についておさらいです。
素数とは、その数と1でしか割り切れない自然数のことです。つまり約数が2つしかない数。
というわけで、「1」は素数じゃありません。ご注意を。

では、実際にエラトステネスの篩を用いて、1〜100までの素数を見つけてみましょう。

1 2 3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
30 31 32 33 34 35 36 37 38 39
40 41 42 43 44 45 46 47 48 49
50 51 52 53 54 55 56 57 58 59
60 61 62 63 64 65 66 67 68 69
70 71 72 73 74 75 76 77 78 79
80 81 82 83 84 85 86 87 88 89
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99
100

まずは一番初めの素数が2なので、1を落としたあと、2の倍数を落としていきます
2 3 5 7 9
11 13 15 17 19
21 23 25 27 29
31 33 35 37 39
41 43 45 47 49
51 53 55 57 59
61 63 65 67 69
71 73 75 77 79
81 83 85 87 89
91 93 95 97 99

次の素数は3なので、3の倍数を落としていきます
2 3 5 7
11 13 17 19
23 25 29
31 35 37
41 43 47 49
53 55 59
61 65 67
71 73 77 79
83 85 89
91 95 97

次の素数は5なので、5の倍数を落としていきます
2 3 5 7
11 13 17 19
23 29
31 37
41 43 47 49
53 59
61 67
71 73 77 79
83 89
91 97

次の素数は7なので、7の倍数を落としていきます
2 3 5 7
11 13 17 19
23 29
31 37
41 43 47
53 59
61 67
71 73 79
83 89
97

これで終了です。
見事に素数が残りました。

素数は無限に存在しますが、現在わかっている最大の素数は2^20996011-1です。
数値にして632万430桁。ミカエル・シェイファー氏が2003年12月3日に発表しました。
200万台のパソコンで2年かけて計算されました。
なお、この素数はエラトステネスの篩で見つけたのではなくて、メルセンヌ素数判定法を用いてます。
メルセンヌ素数は2^p-1(pは素数)で表わされる素数です。

例えば、p=5のとき、2^5-1=31。31は素数ですので、「31は5のメルセンヌ素数」といいます。
必ず素数になるわけではありません。p=4のとき、2^4-1=15。15は3と5の倍数なので、素数ではありません。

シェイファー氏の発見した2^20996011-1は、40番目のメルセンヌ素数です。
40個のpの値を順番に紹介します。

pの値 発見年度 発見者
1 2
2 3
3 5
4 7
5 13 1456 アノニマス
6 17 1588 カタルディ
7 19 1588 カタルディ
8 31 1772 オイラー
9 61 1883 パーヴシン
10 89 1911 パワーズ
11 107 1914 パワーズ
12 127 1876 ルーカス
13 521 1952 ロビンソン
14 607 1952 ロビンソン
15 1279 1952 ロビンソン
16 2203 1952 ロビンソン
17 2281 1952 ロビンソン
18 3217 1957 リーゼル
19 4253 1961 ハーウィッツ
20 4423 1961 ハーウィッツ
21 9689 1963 ギリーズ
22 9941 1963 ギリーズ
23 11213 1963 ギリーズ
24 19937 1971 タッカーマン
25 21701 1978 ノールとニッケル
26 23209 1979 ノール
27 44497 1979 ネルソンとソローウィンスキー
28 86243 1982 ソローウィンスキー
29 110503 1988 コロクイットとウェルッシュ
30 132049 1983 ソローウィンスキー
31 216091 1985 ソローウィンスキー
32 756839 1992 ソローウィンスキーとゲイジ
33 859433 1994 ソローウィンスキーとゲイジ
34 1257787 1996 ソローウィンスキーとゲイジ
35 1398269 1996 アーマンゴウドとウォルトマン
その他GIMPSの方たち
36 2976221 1997 スペンスとウォルトマン
その他GIMPSの方たち
37 3021377 1998 クラークソンとウォルトマンとクロウスキー
その他GIMPSとPrimeNetの方たち
38 6972593 1999 ハジャラテュワラとウォルトマンとクロウスキー
その他GIMPSとPrimeNetの方たち
39 13466917 2001 キャメロンとウォルトマンとクロウスキー
その他GIMPSとPrimeNetの方たち
40 20996011 2003 シェイファーウォルトマンとクロウスキー
その他GIMPSとPrimeNetの方たち

さて、メルセンヌ素数には他の素数にない特徴があります。
メルセンヌ素数は2進数に直すと面白いことになります。
2^2-1…3      ⇒11
2^3-1…7      ⇒111
2^5-1…31     ⇒11111
2^7-1…127    ⇒1111111
2^13-1…8191   ⇒1111111111111
メルセンヌ素数の特徴として、2進数にすると各位が全て1になります。

どうやってメルセンヌ素数が素数かどうか判断するのか?
それにはメルセンヌ素数判定法を使います。
これは12番目のメルセンヌ素数を発見したルーカスの考え出した方法です。

必ず4からはじめます。
4^2-2=14 ⇒ 14^2-2=194 ⇒ 194^2-2=37634
この計算を(p-1)回行ないます。
この計算で最終的に出た値をpのメルセンヌ素数で割った時に、割り切れたらそれは素数です。

実用してみましょう。p=5のときのメルセンヌ素数(=2^5-1 =31)は素数かどうかためしてみましょう。
(p-1)回計算するので、4回です。
1回目…4
2回目…4^2-2= 14
3回目…14^2-2= 194
4回目…194^2-2= 37634
37634÷31が割り切れたら素数です。
この式は割り切れなさそうに見えますが、計算すると1214で割り切れます。
というわけで5のメルセンヌ素数は素数です。

なぜ、ルーカスの方法で素数判定ができるかは、各自で調べてください^^

そういや、素数を並べていくと、「3、5」のように連続した2奇数が素数の場合があります。
これを双子素数といいます。

@双子素数の真ん中の数は偶数
 定義からして明らかです。
A双子素数の真ん中の数は3の倍数
 真ん中の数をnとし、双子素数をn±1とすると、
 この三数は連続した自然数である。
 3を除く素数は3の倍数ではないから、nは3の倍数。
 ただし、3を含む(3,5)の組は例外。
B双子素数の真ん中の数は6の倍数
 @Aより。2の倍数であり、3の倍数なので、6の倍数でもあります
 ただし、3
を含む(3,5)の組は例外。
C三つ子素数の組は(3,5,7)のみ
 連続した3奇数のうち一つは3の倍数
 3を含む組(3,5,7)のみが三つ子素数に成り得る。

双子素数は無限に存在するか否かはまだ解けていない謎です。

…実は素数で賞金が手に入るってご存知でしたか?
電子フロンティア財団(EFF)が素数に賞金をかけております。
100万桁の素数…5万ドル(約500万円)(2000年4月にGIMPSが獲得)
1000万桁の素数…10万ドル(約1000万円)
1億桁の素数…15万ドル(約1500万円)
10億桁の素数…25万ドル(約2500万円)

素数を必死に探すのはロマンと金のためなんですね。
………世の中、金ですよ。

since 2004/3/21
2004/3/21 その数と1でしか割り切れない自然
現在わかってる最大の素数情報など追加(情報提供:三硫化タングステンさん)
セドナは惑星ではないので、惑星から削除。その理由について述べた文を追加。

2004/4/9 エラトステネスの篩を訂正。
双子素数について記述(情報提供:三硫化タングステンさん)
2
335」のように連続した2
皇帝さんの指摘により双子素数について訂正、詳細を記述。

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