No.056 変態数学者

紀元前3世紀にシラクサという都市で怪しいものがいました。
町中を全裸で駆け回ってる男がいるのです。
彼は「ユウリカ、ユウリカ」と言いながら駆け回ってます。
町の人々は驚きです。

明らかな変態行為です。

その変態の名は偉大なる数学者アルキメデスなのです!!

シラクサという都市は、現代も残っております。
イタリア共和国のシチリア島東岸に位置しています。

さて、なぜアルキメデスはあのような行動をとったのか??
そのエピソードを紹介します。

アルキメデスは紀元前287年にシラクサに生まれました。
彼はアレキサンドリアに留学し、故郷に戻ってからは研究活動に没頭していました。

ある日、シラクサの王様のヒエロンU世が職人に純金の王冠を作ってもらいました。

のちに王様は「職人が純金に銀を混ぜてごまかしていた」という噂を聞きました。

王様はアルキメデスに王冠が100%純金かを調べるように命令しました。
但し、王冠の形は崩さずに調査しろという命令です。

アルキメデスはかなり悩みました。

全然どうやってそんなの調べたらいいのかわからないので、イヤになってお風呂に入りました(笑)

彼が風呂に入ると、風呂の湯があふれ出しました。
しかも、肩の荷が重かった体が、風呂に入ったら軽くなる。

そしてアルキメデスは思いついた!
自分の体積の分だけ湯があふれ、自分が軽くなる」ということに。

そして、彼はそこから王冠が純金かどうかを調査する方法を思いつきました。

彼は喜びまくって、自分が裸だということも忘れて、町中を駆け回ったのです。
そのときに彼が言ってた「ユウリカ、ユウリカ」とは、「わかったぞ、わかったぞ」という意味です。

彼がその言葉を言ったことから、英語にもなっています。

eu・re・ka
見つけた!、わかった!、しめた! ★米国カリフォルニア州の標語。
ギリシャ語`I have found (it).' の意;アルキメデスが王冠の金の純度を量る方法を発見した時の叫び声から

さて、彼は王様に実験を見せました。
まず、水を容器のギリギリまで満たして、その中に王冠を入れます。
そうしたら、水がこぼれます。
次に、水を容器のギリギリまで満たして、その中に王冠と同じ重さの純金を入れます。
そうしたら、もちろん水がこぼれます。
もし王冠がすべて純金なら、こぼれた水が王冠と同じ重さの純金と同じになるはず。
しかし、銀が混ぜられていたので、同じ量の金と銀では銀のほうが軽いため、
王冠を入れたときにこぼれた水のほうが、同じ重さの純金を入れたときより多くこぼれました。
そうです。王冠は同じ重さの純金より体積が大きかったのです。やはり銀は混ざってました。

この調査方法は一般的に語り継がれていて有名なものです。

しかし、もう一つの調査方法の話が残っています。

王冠と、王冠と同じ重さの純金を、水の中で天秤に乗せてみました。
すると、王冠のほうが体積が大きいため、浮力が大きくなり、純金のほうに傾きました。

そして、銀混入詐欺がバレてしまった職人は死刑になりました。

というわけで、何が言いたかったかというと、
アルキメデスは風呂に入ったことで、水に沈んだ体積の分だけ、水を押しのけるということがわかり、
押しのけた分だけ物体に浮力がかかるということがわかったのです。

ここから生まれた原理があります。「アルキメデスの原理」です。

アルキメデスの原理
 流体中の物体は、その物体が押しのけている流体の重さに等しい大きさの浮力を、
 重力と反対の向きに受ける。

これを式で表わしたものが、
F=pV」です。F=浮力、p=流体の密度、V=流体中にある物体の体積。

とあることわざ辞典に「氷山の一角」という言葉が載ってました。
意味は「明るみに出た、物事全体のほんのわずかの部分のたとえ」です。
よく見ると小さく書いてありました。「※実際の氷山の一角は全体の一割です」と。

ホントかよ?

てなわけで、アルキメデスの原理を用いて調査です。

ちょいと画質が荒いのは勘弁(^^;

まず、浮力を求めてみましょう。
そのために必要なのが、海水の密度(p)です。
密度は温度によって異なりますが、
流氷があることから氷点下の海とした場合、密度は約1.03g/cm3となります。

ここから、浮力(F)は(1.03×V2)gだとわかります。

次は氷山の質量(W)を求めます。
そのために必要なのが、氷の密度です。
氷の密度は約0.92g/cm3です。

ここから、質量(W)は(0.92×V1)gだとわかります。

浮力(F)と質量(W)はつりあっているため、
F=W
1.03×V2=0.92×V1
V2÷V1=0.92÷1.03 =0.8932…

よって、水面下の氷山は全体の約9割だとわかります。
だから、「氷山の一角」は全体の約1割

彼は円周率を求めたのは有名な話です。
彼の求め方は天才的です。

円周率は円周÷直径で求められるのですが、
もちろん、円周を正確に測るのは難しいです。

なので、彼は円周に外接する正九十六角形と内接する正九十六角形を書きました。
正九十六角形の各辺は直線なので、全ての辺の長さの和は円周に限りなく近くなります。

実際に測ってみて、円の直径で割ってみたら、次のような関係がわかりました。
220/70>π>223/71

220/70 ⇒ 3.14285714285714285714285714285714
π    ⇒ 3.14159265358979323846264338327950
223/71 ⇒ 3.14084507042253521126760563380282

ちゃんと合ってるんですよ。すごいですね。

彼は球の体積・表面積も世界で初めて求めました。

全て半径が等しい円柱、円錐、半球を用意します。

アルキメデスは、体積について、半球=円柱−円錐だと予想しました。

実際に模型を作り、重さを測ってみてもそのような結果となりました。

そこから、彼はしっかりと証明をしました。

赤色の面で立体を切断します。上からhのところで切断する。
すると、切断面は全て円になる。

円柱の切断面…円の半径はr。面積はπr2
円錐の切断面…円の半径はh。面積はπh2
半球の切断面…円の半径は三平方の定理より√(r2-h2)。面積はπ(r2-h2)

π(r2-h2)を展開すると、πr2-πh2になります。

よって、半球の切断面=円柱の切断面−円錐の切断面。

どこで切っても同じ事が言えるので、半球の体積=円柱の体積−円錐の体積

よって、球の体積=半球の体積×2
           =2(円柱の体積−円錐の体積)
           =2(円柱の体積−(円柱の体積×3分の1))
           =2(円柱の体積×3分の2)
           =円柱の体積×3分の4

そして、球の体積の公式は半径×半径×半径(=高さ)×π×3分の4

球を中心に向かって切りまくると、大量の三角錐が作れるのがわかりますか?

その大量の三角錐の底面積の合計は球の表面積、
体積の合計は球の体積になります。

なので、球の体積=球の表面積×球の半径×3分の1
     3分の4πr3=球の表面積×r×3分の1
     球の表面積=4πr2

ふぅ、疲れましたね・・・・。
そんなわけでアルキメデスはがんばったわけです。

彼はてこの原理も発見してます。
また登場してくるのが王様のヒエロンU世です。

彼は「われに足場を与えよ。されば地球を動かさん」という名言を残しています。
足場を与えてくれたら、てこの原理で地球を動かしてやるという自信過剰な言葉です。

王様は「地球の代わりに何か大きなものを動かせ」といいました。

彼は荷物を満載した船を滑車を用いて港から、岸に上げました。
そのとき彼は椅子に座ったまま、片手だけで上げたらしいです。

…すごいですね、アルキメデス。

そんな彼は第2次ポエニ戦争で活躍しました。

反射鏡で日光を集めて遠くの敵を燃やしたり、投石器で石を投げまくったり。
紀元前のドラえもんのような存在で、すごい道具を使いまくりました。
もちろん全てお手製です。

そんな彼は紀元前212年に地面に円を書いていたら、
ローマ軍の兵士がその円を踏んでしまいました。

彼は激怒しました。

「俺の円を汚すな!」と兵士にキレました。

・・・享年75歳。彼は兵士に殺されました。

敵の将軍マルケスはアルキメデスの墓を作ってあげました。
彼の墓には球に外接する円柱が刻んであります。

紀元前1世紀にローマのキエロがアルキメデスの墓を発見して以来、
今は行方不明だそうです。

ユウリカ、ユウリカ♪

since 2004/4/12
2005/2/5 poochの指摘により訂正「彼の墓には円と円に外接する円柱が刻んであります。」

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