No.061 つばを吐くだけで犯罪です

日本にはさまざまな決まり事を書いた法律がたくさん存在します。
日本国憲法、刑法、商法、刑事訴訟法、民事訴訟法、民法などよく知られている法律もあれば、
温泉法、理容師法、歯科衛生士法など知名度の低い法律まであります。

今回はさまざまな法律にまつわる話をしようと思います。

遺失物法
ザツオくんは一万円札を拾ったので、親切に交番に届けました。
三日後、ザツオくんに連絡が入りました。落とし主が見つかったようです。
ザツオくんはウキウキして交番に行きました。一万円の一割の千円がもらえると思ったからです。
しかし、落とし主はザツオくんに六百円しかあげませんでした。

遺失物法第四条一項
物件ノ返還ヲ受クル者ハ物件ノ価格百分ノ五ヨリ少カラス二十ヨリ多カラサル報労金
拾得者ニ給スヘシ但シ国庫其ノ他公ノ法人ハ報労金ヲ請求スルコトヲ得ス

一般に「一割の報労金がもらえる」と思われていますが、
遺失物法の定めるところでは、「五分〜二割の報労金がもらえる」が正しいです。

今回のケースでは、五百円〜二千円をザツオくんは手に入れる可能性がありました。
落とし主がもっと気前のいい人だったら二千円ぐらいくれたかもしれません。

 

軽犯罪法
ザツオくんと、その友達4人は、肝試しをするために、ある屋敷に忍び込みました
この屋敷は20年前に持ち主が交通事故で亡くなり、それ以来幽霊が出るといわれ始めました。
その持ち主の遺族もこの土地は放棄して、今では誰のものでもありません。

軽犯罪法第一条一項
人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた

彼らは軽犯罪法第一条一項違反です。
人が住んでいないので、刑法第百三十五条住居不法侵入罪には問われません。
持ち主がいないからといい、勝手に建物の中に入るのはやめましょう。

どこまでが「正当な理由」なのかは微妙なところです(^^;

 

ザツオくんは夜遅くまでパソコンをしてたので、寝坊して学校に遅れそうになりました。
急いで彼は自転車をこいで駅に行きました。
駅についたのと同時に、ホームのほうからは「電車が参ります」という放送が聞こえました。
ザツオくんはその電車に乗り遅れたら、授業開始に間に合わないので、いそいで改札を通ろうとしました。
しかし、運悪く定期券の期限が切れていました。
焦ったザツオくんは切符をすぐに買おうと思ったのですが、券売機には行列ができていました。
ザツオくんは急いでいたので、列に無理に割り込んで、切符を購入しました。

軽犯罪法第一条十三項
公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、
又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し
若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、
若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み
若しくはその列を乱した者

ザツオくんは軽犯罪法第一条十三項違反です。
みなさんも列の割り込みはやめましょう。

 

ザツオくんは路上につばを吐きました
周りの人は不快に思いました。ザツオくんは「つばを吐いただけだ、俺は何も悪くない」と思っています。

軽犯罪法第一条二十六項
街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者

ちなみに、立小便もこの法律により違法とされていますので。

 

ザツオくんはテストの点数が悪かったので、むしゃくしゃしていました。
だから、ストレス発散のため、遊び半分に下校中の小学生を「通せんぼ」してやりました
小学生は下校を妨害されたので、とうとう泣き出してしまいました。

軽犯罪法第一条二十八項
他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、
又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者

通せんぼも、ちゃんと法律で禁じられています。
そんな、しょうもないことをする人は少ないと思いますけどね。

 

国旗及び国歌に関する法律
ザツオくんのクラスでは、美術の時間に「国旗を書こう!」という課題がされました。
ザツオくんは「日本の国旗」を書くことになりました。
ザツオくんは「やったぁ〜、楽勝じゃん♪」と、白紙に赤い丸を描きました。
マナブくんは「ブラジルの国旗」を書くことになっていたので、イライラしていました。
だから、ザツオくんに「その丸小さすぎじゃないか?」と嫌味を言ってやりました。
ザツオくんは「大きさなんか決まってるか!ボケ!」と言い返しました。

国旗及び国歌に関する法律別記第一
一 寸法の割合及び日章の位置
    縦 横の三分の二
   日章
    直径 縦の五分の三
    中心 旗の中心
二 彩色
    地   白色
    日章  紅色

直径はしっかりと定められていますので、ザツオくんの言ってることは間違っています。
また、日の丸の色は「赤色」ではなくて「紅色」なので注意してください。

赤色   紅色
     

微妙に色が違いますよね(笑) コンピュータの設定によっては同色に見えることもありますので。

ちなみに、この法律では国歌「君が代」の楽譜までかかれています。

 

失火ノ責任ニ関スル法律
ザツオくんの家の隣の家はマナブくんの家です。
ある日、マナブくんの家の電化製品がショートして、それが原因で火災が発生しました。
みるみるうちに火の手は広がり、ザツオくんの家まで全焼してしまいました。
ザツオくんの家族はマナブくんの家族から慰謝料がどのくらいもらえるのでしょうか。

失火ノ責任ニ関スル法律
民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス
但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

(民法第七百九条…故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス)

なんとザツオくんの家族には慰謝料0円です。
もし、マナブくんの火遊びなどが火災の原因だったら、慰謝料はもらえますがね。

ちゃんと火災保険に入っておきましょう。

 

銃砲刀剣類所持等取締法
ザツオくんの学校ではエアーガンが流行っています。
休みの日には、みんなBB弾を撃ちまくっています。
ある日、ザツオくんはみんなより強くなりたいと思い、
BB弾ではなく、金属球を撃ちまくりました

銃砲刀剣類所持等取締法第二条
この法律において「銃砲」とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃
その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮ガスを使用するものを含む。)をいう。

金属球を使ったら銃刀法違反です。
市販のBB弾はプラスチック製なので、ちゃんとそれを使いましょう。

ついでにBB弾についての雑学を紹介しておきます。
BB弾は直径6mmのプラスチック球です。
BBというのは、散弾の直径の区分が由来といわれています。
小さい順に10〜1、B、BB、BBB、A、AA、AAAと表記されるみたいです。
「Ball Bullet」(球状弾丸)の略だという説もあります。

 

民法
(Hell ambassadorさんの投稿)
買った骨董品が偽者でも文句は言えないのか!?

現在お宝ブームが起こっているが問題になるのが真贋である。
それではアンティーク店で「レプリカ」を本物だと信じて買った場合、
後で、偽物だとわかり返品し「金を返せ!」といった場合返金してくれるか?

これは法律的に見ればお店の主人はお金を返さなくてもいいのです。
店主から「偽物とはいいますが、これはレプリカですし適正な値段で売っただけですよ!
あなたが勝手に本物と信じて買ったのでしょう?」と、いわれてしまえば、もはやそれまで。
お客さんが勝手に本物と思い込み店主に確認することなく、
また店主がウソをついてい「なければ」法律上、何の問題もない。
ただし、店主がウソを言って売ったのなら詐欺罪に問われる。

民法第九十五条
意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス
但表意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス

民法95条は「錯誤による意思表示」を規定している。
これは契約の重要な部分について錯誤があったときは無効になると規定している。
それならば、お客さんが本物だと思い込んだのは「錯誤」だからこの契約は無効だ!
と、思う向きもあるかもしれないが民法95条でいうところの「錯誤」は契約を無効に
しなければならないほどの重要な部分を指している。
ただ単に、お客さんが「本物」と思っただけではダメ!!
民法95条には該当しない。

 

友達などに物(例えば本など)を貸したところ返してくれないなどという事は良くある事です。
そこで友達の家に遊びに行き貸した物があったのでスキをみて取り返し、
自宅へ持って帰った。
さて、こうなると友達は貸した物の返還を請求する裁判を起こす事が出来ます。

民法第二百条
占有者カ其占有ヲ奪ハレタルトキハ占有回収ノ訴ニ依リ其物ノ返還及ヒ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得

民法第200条に規定された「占有回収の訴え」です。
普通ならば「自分の物を取り替えしただけなのに、ナンデ?」
「こんな馬鹿な話があるか!?」と思うでしょう。
これは民法が占有権を認めているからです。
それじゃ〜、占有権って何?と言う事になりますが
先に書いた友達は「自分のために物を持って居る事を占有といって、
占有権を得る事になる。」こう言われてもピンとこないので
具体例と法的根拠を言いますと、
貸した人間が実力行使すると、強い者が勝って弱者が踏みにじられる可能性があります。
そこで社会秩序が乱れるのを防ぐ目的を持って作られた制度です。
例えば、賃貸のマンションに住んでいる借家人が出ていかないので大家さんが
暴力団を雇って「出て行け!!」と言ったらどうなるでしょう?
こわいですね〜。大家さん・借家人のどちらにどんな理由があるのかは分からなくても。
例えば、
@借家人が家賃を払わない場合などが想像されますね。
A大家さんがその建物を取り壊し誰かに売りたい場合などが想像されますね。
いずれに致しましても借家人は出て行かざるを得ない。
こう考えてみると分かりやすいですね。

貸した人間に正当理由があって借り主が返さなければ貸した人は訴訟を起こして
判決を得なければならない。こうして国家権力によって返してもらうのが正当なルールです。
これをオレの物だから勝手に取り返したのだ!と言う事になれば
今度は逆に借りた側の友達が裁判を起こせばその貸した物は彼の手に戻ってくる。
「そんなのオカシイヨ〜!ヘンダヨ〜!!」と言っても認められない。
貸した人間が返して欲しければ『所有権』にもとづいて取り返す訴えを、
まず先に起こさなければならない訳ですね。

 

法律は奥が深いです。ご自分で調べてみるのもよいかと思います。

 

since 2004/6/15
2004/6/16 Hell ambassadorさんの投稿により民法第九十五条のケースを追加。
2004/6/18 Hell ambassadorさんの投稿により民法第二百条のケースを追加。
2004/6/19 たんつばの解釈をナ変さんの指摘により訂正。「痰入り唾」ではなく「痰や唾」。

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