No.068 モールス信号
「モールス信号」は、誰もが一度は耳にしたことがあるはず。
しかし、使える人は、あまりいないのではないだろうか。
これはアメリカの発明家・サミュエル=モールス氏が考案したものです。
さまざまな言語のモールス信号があります。
英語、日本語はもちろんのこと、
ロシア語、ヘブライ語、ハングル語などのモールス信号もあります。
中国語のモールス信号はすごいです。
中国語は漢字なのですが、量が半端ではありません。
一つ一つにモール信号があり、「電報新編」という分厚い本にまとめられています。
さて、今回は英語(欧文モールス信号)と、日本語(和文モールス信号)を紹介します。
まずは欧文モールス信号から。
A | ・− | H | ・・・・ | O | −−− | V | ・・・− |
B | −・・・ | I | ・・ | P | ・−−・ | W | ・−− |
C | −・−・ | J | ・−−− | Q | −−・− | X | −・・− |
D | −・・ | K | −・− | R | ・−・ | Y | −・−− |
E | ・ | L | ・−・・ | S | ・・・ | Z | −−・・ |
F | ・・−・ | M | −− | T | − | ||
G | −−・ | N | −・ | U | ・・− |
モールス信号は、短点「・」と長点「−」で表記されます。
正式に表記するのならば、長点の長さは短点3つ分。
各点の間は短点1つ分、文字の間は短点3つ分、単語の間は短点7つ分あける。
「・」は「トン」、「−」は「ツー」と読みます。
欧文モールス信号は、使用頻度が高いものほど、モールス信号が短くなっています。
例えば、よく使う「E」や「T」は、点1つのモールス信号です。
1 | ・−−−− |
2 | ・・−−− |
3 | ・・・−− |
4 | ・・・・− |
5 | ・・・・・ |
6 | −・・・・ |
7 | −−・・・ |
8 | −−−・・ |
9 | −−−−・ |
0 | −−−−− |
数字はこのように表わされます。
ピリオド | . | ・−・−・− |
コンマ | , | −−・・−− |
疑問符 | ? | ・・−−・・ |
区切り | −− | −・・・− |
ハイフン | − | −・・・・− |
斜線 | / | −・・−・ |
アットマーク | @ | ・−−・−・ |
訂正 | ・・・・・・・・ |
続いて、和文モールス信号です。
イ | ・− | カ | ・−・・ | オ | ・−・・・ | メ | −・・・− |
ロ | ・−・− | ヨ | −− | ク | ・・・− | ミ | ・・−・− |
ハ | −・・・ | タ | −・ | ヤ | ・−− | シ | −−・−・ |
ニ | −・−・ | レ | −−− | マ | −・・− | ヱ | ・−−・・ |
ホ | −・・ | ソ | −−−・ | ケ | −・−− | ヒ | −−・・− |
ヘ | ・ | ツ | ・−−・ | フ | −−・・ | モ | −・・−・ |
ト | ・・−・・ | ネ | −−・− | コ | −−−− | セ | ・−−−・ |
チ | ・・−・ | ナ | ・−・ | エ | −・−−− | ス | −−−・− |
リ | −−・ | ラ | ・・・ | テ | ・−・−− | ン | ・−・−・ |
ヌ | ・・・・ | ム | − | ア | −−・−− | 濁点 | ・・ |
ル | −・−−・ | ウ | ・・− | サ | −・−・− | 半濁点 | ・・−−・ |
ヲ | ・−−− | ヰ | ・−・・− | キ | −・−・・ | ||
ワ | −・− | ノ | ・・−− | ユ | −・・−− |
わざわざイロハ順にしてあるのには理由があります。
欧文モールス信号の順を元にして、イロハに当てはめていったからです。
だから、使用頻度などは考慮されていません。(「・」は「ヘ」、「−」は「ム」をあらわします。)
数字は欧文モールス信号と同じですが、記号は違います。
長音 | ー | ・−−・− |
区切点 | 、 | ・−・−・− |
段落 | 」 | ・−・−・・ |
下向き括弧 | ( | −・−−・− |
上向き括弧 | ) | ・−・・−・ |
本文 | −・・−−− | |
訂正・終了 | ・・・−・ |
さて、モールス信号は身近なところで用いられています。
地震速報などが入ってきて、テレビ画面の上部に文字が表示されるときに高い音が鳴りますよね。
この音です。きっと聞き覚えがあるはず。
実はこの音、モールス信号なんです。
何を表わしているかわかりますか?
「ツートントントンツーツートントントン」と鳴っています。
記号で書くと「−・・・−−・・・」です。
実は、欧文モールス信号で「NEWS」をあらわしています。
また、「SOS信号を発信する」なんてよく言いますよね。
なぜ、SOSかご存知ですか?
「Save Our Ship」の頭文字という説がありますが、全くのデマです。
SOSを欧文モールス信号で書いてみたら、わかります。
SOS→「・・・−−−・・・」(トントントンツーツーツートントントン)
慌てていても間違え無いように、
モールス信号がとても簡単な「S」「O」「S」を用いたんです。
実は「SOS」が国際協定で採用されたのが1908年なのですが、
それまでは「CQD」という信号が使われていました。
「CQ」は「警戒」、「D」は「遭難」を意味します。
しかし、モールス信号で打ってみると、
CQD→「−・−・−−・−−・・」(ツートンツートンツーツートンツーツートントン)
複雑なんです(-_-;)
つまり、SOSは特に意味が無く、ただ打ちやすいから、この三文字になったんです。
ちなみに国際協定で採用された4年後の1912年、
はじめてSOS信号が実際に送信されました。
そのとき、送信した船というのが、かの有名なタイタニック号です。
1977年にピンクレディーが歌って大ヒットした「S・O・S」という曲があります。
NHK「天才テレビくん」のアニメ「アリスSOS」のオープニングテーマとしても使われました。
この曲のイントロは「SOS」のモールス信号から始まります。
だから、ラジオで、この曲が放送されたとき、
船舶が実際のSOS信号と勘違いしてトラブルが起きてしまいました。
以後、ラジオでの放送が禁止され、
レコード会社は急遽、ラジオ用にモールス信号がないバージョンを作りました。
1996年に、海上保安隊がモールス信号の使用が停止。
1999年2月には、船舶でのモールス信号の使用が停止。
同年には、NTTグループもモールス信号の使用を停止。
現在は、アマチュア無線、漁業無線、
陸上自衛隊野戦通信などでのみ、モールス信号が使われています。
ていうか、モールス信号なんてどう利用したらいいの?
覚えてて意味あるの?得するの?
・・・なんて思っちゃいますよね。私も思います(笑)
というわけで、画期的利用方法を考えてみました。
●モールス信号でカンニング!!
モールス信号をみんなで覚えて、テスト中にシャーペンを使って信号送信。
「・」→シャーペンを机に叩きつけ、「トン」
「−」→「ツー」は難しいので、シャーペンの芯を出して「カチ」
例として、鈴木君と佐藤君のカンニングシーンをとりあげます。
鈴木:(やべぇ、6番わかんねぇよ!)「カチトントントントン(=6)」(−・・・・)
佐藤:(6番ね。え〜と...「物体1cm3あたりの質量のことを何と言うか?」。簡単じゃねぇか。)
「トントンカチトンカチトンカチカチトントントンカチトントントントン(=密度)」(・・−・−・−−・・・−・・・・)
まぁ、カンニングは悪いことなので、絶対にやめましょう。
ちなみに、モールス信号カンニングは実際に行なわれたことがあります。
2004年11月22日、韓国・後周市の大学修学能力試験(日本で言うセンター試験)のことです。
@成績優秀な受験生が糸電話で外にいる人に答えを連絡。
A外にいる人は受験生の耳穴に入れたスピーカーにモールス信号で答えを連絡。
このような連携プレイでカンニングが行なわれました。
解答を送信する成績優秀な受験生は50万ウォン(約5万円)の報酬を受け取っていました。
このカンニングの関係者は81名にもなります。
ある時、モールス送信機が故障してしまいました。
受験生はトイレに入り、回答者は窓の外から手旗信号で答えを連絡。
それを監査官に見られてしまった。
しかも、監査官は元通信兵だったので、その場で手旗信号の内容がバレてしまいました。
取調べの際、受験生は言ったそうです。
「必死にモールス信号を覚えたが、真面目に受験勉強しても手間は変わらなかった。
こんなことなら素直に問題集を解いていたほうが良かった。」
モールス信号を覚える暇があったら、勉強しろということです。
尚、「NEWS」の音声ファイルを作る際、
TQTさまのモールス信号変換機「cw2wav」を使わせてもらいました。
ありがとうございます。
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トントントントンツートンツートンツートントントントンツーツーツートントントントンツーツートントンツートントンツートントンツーツートントンツートントントンツーツートントントン
(since 2004/12/27)
2005/1/3 迅氏、ningle氏(元トン・ツーマン)から、数字のモールス信号に関する指摘を受けました。
以前、記述していたのは「数字のモールス信号の略」でした。