No.069 竜巻の脅威

みなさんは竜巻を間近で見たことがあるでしょうか。
私は小学校の体育の授業のとき、グラウンドで砂を巻き上げる竜巻を見たことがあります。
その竜巻は、テレビで見たことのある竜巻より、スケールが小さく、
人が中に入っても巻き上げられたりはしないものでした。

のちにわかったのですが、これは竜巻ではなく、旋風というものです。
一般に、竜巻は巨大なもので、旋風は小さなものというように、大きさだけで区別されていますが、
竜巻と旋風は、全くの別物。

【竜巻発生のメカニズム】
寒気が暖気の下にもぐ気りこむことで、上昇気流が生まれ、
上空には積乱雲(入道雲)が発達します。

上昇気流は渦を巻きながら、上昇します。
激しい上昇気流が生じると、渦はより大きなものとなり、
積乱雲の底から、漏斗状の雲がだんだん下に垂れてきます。

これが地上に達すると、家屋などを巻き上げて上昇する竜巻になるのです。

【旋風発生のメカニズム】

日光で地表があたためられ、上昇気流が生じます。
渦を巻きながら上昇するため、それが旋風となります。

竜巻は秒速100mを超えるものもありますが、
旋風はせいぜい秒速20mほど。旋風では大きな被害はでません。

竜巻も、旋風も、空気の渦なので、実際には目に見えません。
砂などを巻き上げることで、目に見えるようになっているのです。

渦を巻きながら天高く昇る姿が、竜に似ているということから、
「竜巻」という字があてられました。

竜巻の移動速度は、あまり速くなく、時速数十km。
竜巻を遠くに発見して、すぐに逃げれば助かる可能性は十分にあるわけです。

竜巻は世界中で発生しているため、名称もいろいろあります。
ドイツ・フランスでは「トロンベ」、イタリア・スペインでは「トロンバ」、
ロシアでは「スミリッチ」、フィリピンでは「イポイポ」と呼びます。
アメリカでは、種類によって名称が違い、
陸上竜巻はtornado(トルネード)、水上竜巻はwaterspot(ウォータースポット)、
空中竜巻はfunnel aloft(ファネルアロフト)、旋風はwhirlwind(ワールウィンド)と呼ばれます。

アメリカ合衆国といえば、巨大な竜巻がよく発生する国。
日本では、1961〜1992年の間に少ない年で4個、多い年で37個の竜巻が発生しています。
年平均にすると、日本では約17個
アメリカでは、1953〜1982年の間に少ない年で421個、多い年で1102個の竜巻が発生しています。
年平均にすると、アメリカでは約750個

こんなに発生数が多い理由は、アメリカは国土が広いから。
アメリカは9,631,418km2で世界で第三位の面積。
また、日本は377,835km2で第六十位の面積。
(※国として含むものの違いや、どこまでを国土と認めるかにより、面積順位は異なる。
今回は、国際連合加盟国191ヶ国と台湾、パレスチナ、バチカンを国として含み、
属領を含まない本土のみを国土と認めた統計資料を用いた。)
アメリカの面積は、日本の約25倍ですので、
アメリカの竜巻発生数を25分の1にすると、30個。
日本で発生したとしてもおかしくない個数です。
つまり、日本とアメリカを同じ面積にすると、発生数は大して変わらないのです。

平成2年(1990)12月11日、千葉県茂原市で日本史上最大の竜巻が発生しました。
積乱雲から降ってくる氷のことを雹(ひょう)と言いますが、(霰(あられ)は雹より小さくて、直径2〜5mm。)
この竜巻が発生する前後に、発達した積乱雲からミカン大の大きさの雹が降ってきました。
この雹により、茂原市や鴨川市で多くの被害がでました。
茂原市では、竜巻によって、建物が壊され、樹木が引き抜かれました。

オズの魔法使い』(著:ライマン・フランク・ボーム氏)という有名な本があります。
この本の主人公である少女ドロシーは、大竜巻によって家ごと吹き飛ばされ、
愛犬トトと共に不思議な国へおりたち、冒険の旅をするというストーリーです。

実際、アメリカでは、この物語のように、家が飛んでいくほどの竜巻はよく発生します。
これらからわかるように、竜巻の強さはアメリカのほうが断然上なのです。

竜巻は、低気圧や、風呂の栓を抜いたときにできる水の渦のように左巻きが多いが、
地形によって右巻きになることもあります。
ちなみに、頭にある「旋毛(つむじ)」は、右巻きが63%、左巻きが31%。

竜巻の直径は、数十メートルから数百メートル。

竜巻はアメリカの口語で「twister」(ツイスター)とも呼ばれます。
平成8年(1996)にはヤン・デ・ボン監督による映画『ツイスター』が上映されました。
CGの竜巻は非常に迫力があり、この映画は一大旋風を巻き起こしました。
この映画に出てくる超小型竜巻観測機の名称は「ドロシー」。
これは「オズの魔法使い」の主人公の名に由来しています。

アメリカで竜巻研究をしていた藤田哲也氏(1920.10.23-1998.11.19)は、
ミスター・トルネードと呼ばれたシカゴ大学名誉教授でした。
彼は昭和46年(1971)に竜巻の規模を表わす指標を考案しました。
それを「Fujita-Pearson Tornado Scale」(通称:「藤田スケール」「Fスケール」)と言います。
最低レベルの「F0」であっても、強力です。

F0
風速17〜32m、発生率29%。
煙突が折れる。アンテナがめちゃくちゃになる。
小枝が折れる。根の浅い木が傾くことがある。
道路標識が曲がる。

F1
風速33〜49m、発生率40%。
屋根瓦が飛ぶ。ガラス窓が割れる。
ビニールハウスがめちゃくちゃになる。
根の浅い木が倒れる。強い木の幹が折れる。
走行中の自動車が道から吹き落とされる。

F2
風速70〜92m、発生率24%。
家の屋根がはぎ取られる。
大木が倒れたり、ねじり切られる。
列車が脱線することがある。
車が転がる。

F3
風速50〜69m、発生率6%。
家の壁が押し倒され、住宅が倒壊。
列車は脱線し、ひっくり返る。車は飛ぶ。
森のほとんどの木が引き抜かれる。
平成2年に千葉県茂原市で発生した日本史上最強の竜巻のスケールは、
F3だと考えられている。

F4
風速93〜116m、発生率2%。
家はバラバラになって、飛散する。
列車も飛ぶ。車は何十mも飛ぶ。
F4より強い竜巻は日本では起きないと考えられている。

F5
風速117〜142m、発生率1%。
家は跡形もなくなる。
木は飛ぶだけでなく、皮がはぎ取られる。
列車や車が、とんでもない距離を飛行する。
映画『ツイスター』での竜巻は、このスケール。
F5より強い竜巻はアメリカでも起きないと考えられている。

F6〜F12
これより上のスケールは前代未聞なので、
どれほどの被害が出るのか不明。
ちなみに、F12の風速はマッハ1。

先に書いた竜巻観測機「ドロシー」ですが、
このような観測機は実在します。
名称は「トータルトルネード」。これにより、竜巻の内部構造が明らかになりました。
F4以上の竜巻は、内部にモソサイクロンという別の回転渦を持っています。
それは竜巻本体より回転速度が速く、強いものでF6スケールになるとも言われています。

竜巻の被害は甚大です。
もし竜巻を目撃したら、すぐに遠くへ逃げましょう。

since 2005/2/26

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