No.075 馬にも、こんなに漢字がある

古くから人々と関わりのある動物といえば、犬、そして
生物学的に言うと、哺乳鋼奇蹄目ウマ型亜科ウマ上科ウマ科ウマ属ウマです。

200万年前に、現在の馬の直接の先祖があらわて以来、人々は馬を捕食し、毛皮を利用してきました。
旧石器時代のラスコー洞窟(フランス)では、 馬の壁画が今もなお残っています。

紀元前4000年になると、人々は馬を家畜として、利用しはじめました。
当時にもう「手綱」(たづな)が使われていました。
これは、手綱を馬の口で留め、手綱を引く人間の意志を伝えるための道具「」(くつわ)が、
当時の遺物として発見されていることからわかっています。

紀元前3500年頃には、馬車が発明されました。
実際に馬車が普及したのは、紀元前2000年頃の(や)の発明のあとです。
馬車は、地中海地域から中国の黄河流域にまで普及し、
陸運だけでなく、 軍隊の主力や、耕作のためにも使われるようになりました。
※輻(や)・・・英語でいうところのスポーク(spoke)。車輪の軸受けからリム(枠:rim)に放射状に伸びて、車輪を支える鋼線。

さて、こうして馬が、人々の生活において重要な動物となったわけですが、
中国で馬が盛んに使われるようになった頃、ちょうど漢字がつくられはじめました。

紀元前1500年、殷王朝。
亀の甲羅や牛の肩甲骨などの裏側に、火にあぶって熱した青銅の棒をあてて熱し、
熱せられた表側に生じる「ト」の形の亀裂で吉凶を見るという占いが行われていました。
ちなみに、この亀裂の形から生まれた象形文字が「」(訓:うらない、音:ボク)です。
卜の結果をは、卜に用いた甲骨に刻んでいました。これが漢字の始まりです。
このとき刻まれた字は現在、「甲骨文字」と呼ばれています。

中国文化の代表とも言える漢字、そして中国で盛んに使われた馬。
当然と言っていいように、馬は細かい種類に分けられ、それぞれに漢字が与えられました。

馬馴駅駆馳駄駈騒験騎驚騰

一般の方が、部首が「馬偏」「馬」の漢字を書くとなると、多くてもこれぐらいでしょう。
これらは全て、馬に関係しています。
一件関係なさそうな「駅」「駄」「験」「騰」などだって、もともとの意味は馬に関係しているのです。
左から 「馬をおく場所」「荷物を載せる大きな馬」「多くの馬を乗り比べて調べる」「馬が高く跳ね上がる」という意。

「馬偏」「馬」の漢字(JIS漢字に含まれるもののみ)を羅列してみますと・・・

ざっと100個以上の「馬偏」「馬」の漢字が存在するわけです。
特に右下の「」なんて、「馬」が3つもあり、画数は30画もあります。これはJIS漢字で最も画数が多い字なんです。
(参照:No.066 画数の多い漢字

そもそも、「馬」という漢字は、どのようにしてできたのでしょうか。
これは、象形文字の部類に入り、馬の形をかたどって作られた漢字なのです。
大まかに言えば、上の横線が"たてがみ"、下の点が"脚"をあらわしています。

 

さて、馬といえば、白い馬、茶色い馬、黒い馬など、さまざまですが、実はそれぞれに細かく漢字があるのです。
その一例を紹介してみます。(情報提供:タンタル氏、参考:『今昔文字鏡』)
※なお、馬の画像はイメージですので、実際に漢字があらわしているものとは多少異なることもあります。ご了承ください。

音:ケン
意味:一歳の馬
音:ク
意味:二歳の馬

音:チョウ
意味:三歳の馬

音:ハツ
意味:八歳の馬

音:カ
意味:黄色で口の部分が黒い馬

音:リュウ
意味:赤馬で尾が黒い馬

音:ソウ
意味:青と白の毛の混じった馬

音:キ
意味:薄い黒色の馬
音:カ
意味:赤と白の毛の混じった馬
音:スイ
意味:青と黒の毛の混じった馬
音:ヒ
意味:茶色の毛に白い毛の混じった馬
音:ゴ、キ
意味:碁盤の目のような青黒い模様のある馬

 

音:スイ
意味:馬の小さいさま

音:キョウ
意味:六尺の馬

 

音:ライ
意味:七尺の馬

 

音:フ
意味:両横に添える馬
音:ヘイ
意味:二頭立ての馬車
音:シ
意味:四頭立ての馬車
音:ヒ
意味:四頭立ての馬車の外側の二頭の馬

 

音:シュ、ス
意味:馬の足をつないで動かないようにする
音:ニチ、ジツ
意味:宿場から宿場へと手紙や人を送る馬
音:タイ、ダイ
意味:のろい馬

音:シチ、シツ
意味:がっちりしていて力強く飛び上がる馬
音:ケン
意味:足を曲げてびっこを引く(片足を負傷している)馬

 

では、せっかくなので、「馬」を用いた難読漢字をいくつか紹介しておきます。
馬酔木(ヒント:ツツジ科で春に白い花が咲く)   答え:「あせび
馬鈴薯(ヒント:カレーライスに入っている)   答え:「ジャガイモ
馬陸(ヒント:ムカデに似ている)   答え:「ヤスデ
馬来半島(ヒント:最南端にはシンガポールがある)   答え:「マレーはんとう
馬克(ヒント:ドイツで、2002年元旦に「ユーロ」に変わる以前の貨幣単位)   答え:「マルク
馬穴(ヒント:雪ダルマの頭にかぶせる)   答え:「バケツ


馬といえば、奈良時代から"神の乗り物"として信じられてきた神聖な動物です。
今でも「絵馬」に願いを書いたら神へ通ずると信じられています。
人間万事塞翁が馬。人生何が起きるかわかりません。
新年を迎えるにあたって、絵馬で神頼みしてみるのもいかがでしょうか。

since 2005/12/7
馬の画像は、「Gallery Paradise」さまの素材を加工して製作させていただきました。
2005/12/8 なるさんの指摘により、以下の2点を訂正。
・ 「馬偏」と「馬篇」の混用を「馬偏」に統一。
・「馬克」のヒントの「ドイツの貨幣単位」は、現在は「ユーロ」となっているため、ヒント文を訂正。
2006/5/20 一歳の馬を表す漢字を追加。
2006/9/9 この円周率に円周率を書かれた円周率は死ぬ氏の指摘により、訂正。 左下→右下

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